第六話
僕は持てる知識と体力を全て使い尽くした。


マグネタイトとなるベルを稼ぎ、そして魔界から悪魔を引きだし…

その繰り返しだった。
準備が出来た時は既に2ヵ月も経っていた。

じゅっせい村はTOKYO村より酷くは無かったが、ボンは相変わらず僕に対して騙そうと考えている様だ。たぬきちも変わらない。…ももこは既に居なくなっていた。

僕はこの空間の事を調べていてある程度分かった事がある。
村として存在するこの空間は無限に存在するほぼ脱出不可能のメビウスの輪の様な空間だと言う事と、
どうぶつは同じ人物が複数も存在する、と言う事だ。
…だが、今更それが分かったところで何になる。


この現実世界からかけ離れた無数に存在するパラレルワールドからは脱出出来ないのか。
僕の復讐は永遠に終らないのか。

また嫌な考えが頭を駆け巡る。…そんな考えを自分の頭の奥に閉じ込めた。恐らくもう僕は錯乱していたのだろう。
…まさか、悪魔とユミコを生贄に捧げる約束をしてしまうなんて。ベスとハザマよりも悪魔がユミコを望んだのだ。
悪魔召喚プログラムを作り出す前の僕なら止めていただろう。しかし今の僕はもうそんな事も躊躇しなくなっていた。
僕は完全に変わってしまったらしい。
なら、僕はそんな自分も利用する。もう戻れない道に僕は自分から足を踏み入れた。進むしかないのだ。

『よし。生贄の準備だ。』
僕はユミコを生贄に捧げる為の降魔術の道具を部屋に置き始めた。もはや自分を止める事が出来ない、いや、ユミコを生贄に捧げる事を僕自身が望んでいたのかもしれない。
そんな自分が嫌になって来る。ユミコとはずっと近くに居ながら手紙を出し合ってきた。ユミコがどんな女性かは僕が一番分かっている筈だ。なのに―

『くっくっくっ』
意識を失ったままのユミコを僕は描いた召喚の為の陣の中に入れる。そして僕は迷う事なく悪魔を呼び出し始めた。
それが後の悲劇を招き、自分自身が後悔する事になるとも知らず…