第七話
僕は陣に念を掛けた。もうこれで全てが終わる筈なのだ。
実体を得ていない梟の悪魔、魔獣クーがユミコに近付く。
僕は目を背けた。僕自身はユミコが悪魔に使われると言うのは見たくなかったからだ。
…だが、結果はあまりにも予想とは違う方向に走り出していた。
突然クーの悲鳴が辺りに響く。僕は視線をクーに向ける。
…なんとクーの左翼が炎に包まれていたのだ。
「キシャアアアアア!!!」
クーが炎にまかれながら部屋をのたうち回る。
僕は予測も出来なかった事態にただ、唖然とするだけだった。
クーの左翼はあっと言う間に燃え尽き、身体に炎がうつった。
クーはユミコから遠ざかった。ユミコに何か、悪魔を寄せ付けない何かがあるのだろうか。
炎は部屋のカーペットや壁にもうつり、家を焼き始めた。そしてクーは、灰と化した。
クーを葬った炎は灰まで焼き尽くして、未だ燃えている。
一体何が起こったのだろうか…崩れる木片と倒れる燭台の後ろには、眠っている筈のユミコが立っていた。
「!…ユミコ!?」
目の前の少女は軽蔑の目で僕を見ている。何故今更目覚めたのか…
「あなたが…ナカジマ君?」
ユミコは僕に近付くと平手打ちをしようと手を上げた。僕はとっさにハンドベルトコンピュータを付けていた左腕でユミコの手を押さえた。
「そのコンピュータは…」
「僕はこの空間から脱出するんだ。もう何を出しても構わない!」
そう言った瞬間ユミコの手を掴んでいた左腕が発火した。
僕は直ぐに左腕に水槽の水をかけた。幸い火の規模は小さく、水も少量で済んだので少し赤味を帯びた程度だった。コンピュータも無事だ。
「き、君は…一体!?」
「教えてくれる?こんな事になるまでの事を…」
ユミコは激しい視線を僕に向けていた。